商標登録のよくある失敗10選と対策

みなさんこんにちは、アイリンク国際特許商標事務所弁理士の井上です。

今日は、商標登録でよくある失敗10選を徹底解説します。

なぜこの記事を出そうと思ったかというと、商標登録には、想定外の失敗がたくさんあるためです。

でも安心してください。

これらの失敗は、今日お話しする「よくある失敗10選」を知っているだけで、かなり減ります。

さらに、今日は併せて、失敗しないための対策も一つ一つ丁寧に解説していきます。

これらの対策をすることで、商標登録での失敗を極限まで減らすことができますので、ぜひ、最後まで記事をお読みください。

目次

商標登録の「失敗」とは何?

まず前提として、商標登録における失敗とは何でしょうか。

こんな話をすると、「井上さん、そんなの、『商標登録にならないこと』に決まっているじゃないですか」という声が聞こえてきます。

確かにそれもありますが、実は、「登録になったはいいけれど、後々痛い目にあった」というケースはたくさんあるんですよね。

例えば、「無事に商標登録にはなったけれど、権利範囲が間違っていた」という場合があります。
これ、すごく危ないです。

自動車保険に入っていると思い込んでいたら、実は自転車保険だった、みたいな話です。

結論として、私は、商標登録における失敗とは、商標登録にかけた時間と費用に見合うメリットが得られなかった状態だと考えています。

つまり、コストパフォーマンスが悪い状態ですね。

商標登録の失敗は、例えるならば投資の失敗などと似ています。

なぜかというと、正しく手続きすればOK、登録になればOKということでは全くなくて、手続き自体には間違いがなくてちゃんと商標登録になったけれども、やって損したということはよくあるためです。

先ほどの例で、「『商標登録をしたのに権利範囲が間違っていて、いざという時に役に立たなかった』なんてこと、本当にあるの?」と思うかもしれませんが、これはよくあります。

弁理士を使わずに登録した会社さんはしかたないとしても、弁理士に依頼した場合ですら、権利範囲に穴があるというのは全く珍しくありません。

もはや、穴があるのが普通と言ってもいいくらいです。

このような感じで、今日あげる10個の「よくある失敗」は、一般の方が自分で手続きして失敗するケースと、弁理士を使っても起きる失敗、両方が含まれていますので、どちらの人にとっても必須の内容となっています。

なお、今回の記事は、あくまで「商標登録での失敗」がテーマですので、全く商標登録していなくて痛い目にあった話は除外しています。

このパターンについては、以前に公開した「【商標権侵害トラブル】本当にあった怖い話|世には出ない中小企業の事件とは」という記事で詳しく解説しています。

「そもそも、商標登録ってメリットあるの?」という方は、まずはそちらをお読みください。

なお、この記事の内容は動画でも解説しています。

商標登録のよくある失敗10選と対策

まず、商標登録のよくある失敗について解説します。

よくある失敗10選は以下の通りです。

商標登録のよくある失敗10選
  1. 拒絶理由通知が届いて諦めてしまう
  2. 商標登録になると思っていたのに…
  3. 類似商標があった
  4. 指定商品に穴があった
  5. 商標に余計な要素を含める
  6. ロゴマークのデザインを変更で…
  7. ロゴで商標登録して後悔する
  8. 「二段併記」で商標登録して後悔する
  9. 国際出願できない!
  10. 不使用で商標登録が取り消される

これらの失敗と対策について順番に解説します。

1.拒絶理由通知が届いて諦めてしまう

1つ目のよくある失敗は、商標登録の審査で「拒絶理由通知」が届き、それで諦めてしまうケースです。

つまり、審査結果でダメと言われてしまい、それで諦めてしまう場合ですね。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

拒絶由通知が届いて諦めてしまう|失敗の内容

なぜ、これが「失敗」といえるのかというと、審査官から拒絶理由通知が届いても、解消できる場合があるためです。

そして実は、「解消できる場合がある」にも3種類あります。

  1. 腕の良い弁理士が頑張って反論すれば解消できる可能性がある場合
  2. 正しく反論すれば高確率で解消する場合
  3. 反論も不要で正しく対処すれば確実に解消する場合

残念ながら、この2つ目と3つ目の、正しく対処すれば問題が解消する可能性が高い場合であるにもかかわらず、それが分からずに諦めてしまっているケースが結構多く見られます。

これは、当然ですが、とってももったいないことです。

なお、3つ目の「正しく対処すれば確実に解消する場合」の対処は、私の事務所では、ほとんどの場合無償で行っています。

拒絶理由通知が届いて諦めてしまう|対策

ここで、「拒絶理由通知が届いて諦めてしまう」という失敗への対策を2つお伝えします。

◆対策1

このような失敗を起こさないようにするために最も有効な1つめの対策は、弁理士を使って出願することです。

実際、この失敗は、昔から、弁理士を使わずに自分で手続きをした場合に多くみられました。

ただ、近年は、少数ではありますが、弁理士を使って商標申請した場合にも、このような現象がみられるので、少し注意が必要です。

なぜ弁理士を使ったのにこのような失敗が起きるのかというと、私が見聞きした範囲では、弁理士の知識の問題ということではなく、コミュニケーション量が少ないことによって、このような失敗が起こっているように思えました。

弁理士事務所の中でも、最安値レベルの価格帯で商標申請を請け負う事務所さんは、基本的に、個々のお客さんの知識レベルに合わせて、説明のレベルを変えるような余裕はないと思います。

こういう個別対応って、実は、とても手間と時間がかかるんです。

今後、もっとAIが発達したりすれば、こういう問題は解決するのかもしれませんが、現状は、商標登録の経験が少なくて、なおかつ失敗はしたくないという方は、「ウェブで完結」「1日で出願完了」という、手っ取り早い感じの弁理士事務所ではなく、ある程度、時間をいとわず対応してくれる弁理士事務所に依頼することがおすすめです。

◆対策2

2つめの対策は、自分で手続きをしたいという方に向けた対策です。

自分で手続きをしたいという方の場合は、自分で出願した上で、もし審査官から拒絶理由通知が届いたら、その時は弁理士に相談するという方法もあります。

そうすれば、途中からでも手続きを弁理士に依頼することができます。

ただし、このような途中から弁理士に依頼する場合は、最初から依頼するのと同じ程度の報酬はかかることが多いので、その点はあらかじめ覚えておきましょう。

2.商標登録になると思っていたのに…

よくある失敗の2つ目は、「登録になるとばかり思っていた商標が、審査でNGになり登録にならなかったケース」です。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

商標登録になると思っていたのに…|失敗の内容

ここでの大きなポイントは、「登録になると思っていた」という部分です。

つまり、事前の商標調査の結果で、「登録にならない可能性がある」ということをしっかり認識した上で、「それでもチャレンジする」と商標申請した場合は、これに含まれません。

一方、登録にならない可能性を考慮していない場合、何も考えずにその商標を使ってビジネスをどんどん展開している可能性があります。

そうすると、「審査結果NG」という通知をもらった時に、すでに、商標を変更するのが難しい状態になっている場合があり、それが大きな問題となります。

なお、審査結果NGという通知が届く時期は、早期審査を使っていない場合、概ね6ヶ月〜10ヶ月後になりますから、ビジネス展開もかなり進んでいる可能性があります。

これだけの期間が経過したときに、商標登録になると思っていた商標が登録にならないことが判明すると、結構大きな影響を受けることが考えられます。

商標登録になると思っていたのに…|対策

このような失敗をなくすために最も有効な対策は、事前に商標調査をしっかりすることです。

近年は、一般の方でも特許庁の検索プラットフォームを使って、自分で商標調査する方も増えてきました。

それは素晴らしいことなのですが、商標調査って結構難しくて、検索窓に商標登録したい商標を入れて検索ボタンを押すだけでは、ほとんど役に立ちません。

それだと、完全に同一の商標しかヒットしないためです。

また、類似検索という機能を使って、曖昧検索をかける方法もありますが、これを使って表示されたたくさんの商標の中から、自分の商標と類似して商標を見極めるのは、かなり専門性が必要となる作業です。

なので、商標調査は弁理士に依頼するのがおすすめです。

また、自分で検索してみる場合は、「自分でできる、失敗しない商標検索の方法」を徹底解説した記事も公開していますので、そちらを参考にしてください。

なお、この記事も動画で解説しています。

3.類似商標があった

商標登録のよくある失敗3つめは、「商標申請したけれど、特許庁の審査で登録NGになってしまった」というものです。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

類似商標があった|失敗の内容

「商標申請したけれど、特許庁の審査で登録NGになってしまった」というケースの中でも、特に、「他社の登録商標と類似していると指摘されて登録NGとなってしまった場合」には注意が必要です。

ここまで聞いて、「ん?結局、拒絶査定になって商標登録できないならば、皆同じなんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思います。

確かに、「拒絶査定」が届くのは、どんな理由であれ、嫌なものです。

本当に、「この世から拒絶査定がなくなりますように」と、神社でお祈りしたいくらい僕も拒絶査定が嫌いです。

しかし、実は、同じ審査で落とされるケースでも、ダメージが大きい場合と、そうでもない場合があります。
この、「他人の商標と類似していると言われるケース」というのは、最もダメージが多いパターンです。

なぜならば、この場合はその商標を使う行為は、他人の登録商標と類似している商標を使うわけなので、その他人の商標権を侵害している可能性があるためです。

つまり、この場合は、商標登録できなかったこと以上に、この商標は今後使えなくなる可能性がある点、もっというと、現在この商標をすでに使用していることが違法である可能性がある点を気にする必要があります。

なお、これと似てはいるけれどそこまでダメージが大きくないケースは、「この商標は一般的な言葉に過ぎない」と判断されて、審査でNGとなるパターンです。

例えば、「代官山ステーキBAR」みたいな店名を商標登録しようとした場合、このような拒絶理由通知が来ます。

この場合は、この商標を他人が使っていてもやめさせることはできないけれど、自分自身が使う分には問題がないわけなので、店名を変える必要まではないことになります。

類似商標があった|対策

ここで、「類似商標があった」という失敗への対策を2つお伝えします。

◆対策1

このような問題が起きないようにするための最も有効な対策も、結局、「商標調査をしっかりすること」に尽きます。

そしてしっかり調査した上で、一つ、皆さんにぜひ知っておいてほしいことは、日本の特許庁の審査における「商標の類似」は、一般の方が思う以上に広めに解釈されていることです。

特に判断を誤りやすいのは、下の3つだと思います。

1つずつ解説します。

1つめのケースは、「見た目は違うけれど、読み方が同じケース」です。


特に、「アイリンクとILINQ」のように、違う読み方もできるけれど、同じ読み方もできる場合は注意する必要があります。

2つめは、「読み方が一音違いのケース」です。

「アイリンクとアイリンツ」のようなケースがあります。

これは、必ず類似と判断されるわけではないですが、少なくとも、商標審査基準上は、類似とされる可能性があります。

3つめは「部分一致のケース」です。

「アイリンクとアイリンクスクール」のような場合です。

特に、両者の違いが「スクール」のような普通名称の有無の場合は、類似と判断される可能性が高いです。

◆対策2

もう1つ、直接的な解決策ではないのですが、早期審査を使うという対策もあります。

早期審査というのは、本来半年から1年程度かかる審査の待ち期間を2から3ヶ月にまで短縮する制度です。

もちろん、これを使ったところで、審査結果が変わるわけではありません。

ただ、早く審査結果が出ることにより、仮にそれから商標を変えなくてはならないとしても、ダメージが軽く済む場合があります。

そういう場合は、「早期審査を使って、なるべく早く審査結果を確認する」というのも、有効な方法です。

4.指定商品に穴があった

4つ目のよくある失敗は、商標申請して、無事に登録OKになったけれど、指定商品役務に穴があるケースです。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

指定商品に穴があった|失敗の内容

先ほどもお話しした通り、この失敗は、高い報酬を支払って弁理士を使って商標登録した場合ですらおきます。

その理由はいろいろなのですが、あえて一言で言うならば、「指定商品役務の選択が想像以上に複雑かつ厳密」だからです。

例えば、コンサル会社が商標登録する場合を考えてみましょう。

この記事を読んでいる皆さんの中で、商標登録をしたことがある方、「コンサルティング」と聞いて、第何類のサービスだと思うでしょうか?

かなり詳しい方だと、35類とか、41類といった区分を思い浮かべるかもしれません。

しかし、今、試しに私が特許庁のデータベースで、「コンサルティング」で検索してみると、なんと、第35類から第45類まで11個の区分にわたって、824個のサービスがヒットしました。

その中から、いわゆるコンサル会社、つまり、経営コンサルの会社が実施しそうなサービスをピックアップしてみましょう。

35類経営コンサルティング 35B01
企業の広報活動に関するコンサルティング 35A01
事務処理に関するコンサルティング 35G03
求人に関するコンサルティング 42G02
財務書類の作成に関するコンサルティング 35C01
36類企業の財務に関するコンサルティング  36A01 36B01 36D01 36H01
株式上場の手続きに関するコンサルティング 36B01
41類企業の人材育成に関するコンサルティング 41A01
42類
ウェブサイトの作成に関するコンサルティング 42P02
会社・商品等の名称の考案に関するコンサルティング 42P01
省エネルギーに関するコンサルティング 42Q02
45類
社会保険に関するコンサルティング 42R03
知的財産に関する助言又はコンサルティング  42R01 42R02

一番上に、第35類、「経営コンサルティング」がありますね。

経営コンサルの会社の場合、もう、これだけ指定しておけば間違いないように思えます。

これが、指定商品役務に穴ができてしまう失敗の原因です。

例えば、36類、企業の財務に関するコンサルティングや、41類、企業の人材育成に関するコンサルティングなど、これって、日本語的には、普通に経営コンサルティングの中に含まれていると思うのですが、商標登録の分類上は、これらは、全く別な区分に分類されています。

そしてさらに細かい話をしますと、この横にある35B01というコードを見てください。

これは、類似群コードと言って、サービスの類似の範囲を定めたコードです。

これをみると、第35類の中でも、ここに記載した5つは、すべて違うコードが付与されていることがわかります。

経営コンサルティング35B01と、企業の広報活動に関するコンサルティング35A01、事務処理に関するコンサルティング42G02などなど、これらは全部、一つ一つ指定しなければ、権利範囲から漏れることになると言うことです。

指定商品に穴があった|対策

ここで、「指定商品に穴があった」という失敗への対策を2つお伝えします。

◆対策1

権利範囲に穴が開かないようにする1つめの対策は、まず、弁理士に、自社のサービス内容や商品ラインナップをなるべく細かく伝えることです。

区分を選定は、弁理士の最大の腕の見せ所でもありますので、しっかり仕事をしてもらいましょう。

自社に専門家を抱えている大企業を除いては、「第何類と、第何類の2区分でお願いします。」のように、自社で区分を選択して弁理士に断定的に指示することは、お勧めしません。

◆対策2

指定商品役務の穴ができることを防ぐための2つめの対策は、念の為、広めに指定商品を指定する、ということです。

なぜ、弁理士に商標申請を依頼しても権利の穴ができる場合があるのかというと、現実問題、専門家の弁理士ですら、想定していないようなことが起きるためです。

例えば、「まさか、経営コンサルの中に、企業の広報活動のコンサルが含まれないなんて、想像もしなかった…。」みたいなことが、起きる可能性は常にあります。

それを防止するための方法は一つしかなくて、念の為、なるべく広めに権利を指定しておく、ということしかありません。

区分の選択を失敗しない方法については、以前に記事を公開しておりますので、心配な方はそちらもお読みください。

なお、この記事も動画で解説しています。

5.商標に余計な要素を含める

よくある失敗の5つ目は、「商標に色々な要素を含めて登録してしまう」という失敗です。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

商標に余計な要素を含める|失敗の内容

実は、商標として何を登録するかという選択を失敗することはよくあります。

「商標の選択を失敗するなんてあり得るの? 」と思う方もいるかもしれません。

これは、正直、非常によくあります。例えばこの章で解説する「商標に色々な要素を含めて登録してしまう」という失敗です。

例えば、「Coca Cola」のような商品名と、「爽やかになるひととき」のようなキャッチフレーズを一緒にしたロゴマークとかって、ありますよね。

画像のように、商品名とキャッチフレーズを2列に並べて記載して商標登録するような感じです。

こういう商標登録の仕方だと、「コカコーラ」単体と、「爽やかになるひととき」単体に対して、それぞれ、どの程度権利が及ぶのか、判然としません。

こういう、効果があるのかないのかよくわからない商標登録の仕方は、いざという時にトラブルの元になりますので、あまりお勧めできません。

商標に余計な要素を含める|対策

ここで、「商標に余計な要素を含める」という失敗への対策をお伝えします。

このような失敗をしないための対策として、「複数の商標登録を1つにまとめて商標登録することはしない」という大原則をまず覚えておきましょう。

今回のように、商品名とキャッチフレーズ、両方とも重要であるならば、別々に登録するのがベストです。

ただ、もし、2件商標登録するほどには費用をかけたくないという場合もあると思いますので、その場合は、確実に守りたい、商品名の方を単体で商標登録して、確実に防御するのがセオリーです。

6.ロゴマークのデザインを変更で…

商標の選択の失敗は、他にもあります。ロゴマークで商標登録したけれど、その後、実際に使うロゴマークのデザインを変更してしまったパターンです。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

ロゴマークのデザインを変更で…|失敗の内容

商品パッケージなどのロゴマークは、当然、時代によってデザインを変更していくものだと思います。

ただ、商標登録した後、あまりにすぐロゴマークのデザインを変更してしまうと、もう一度新しいロゴマークで商標登録しなおすことを検討する必要が出てきますので、これはコスパの悪い商標登録になってしまいます。

ロゴマークのデザインを変更で…|対策

ここで、「ロゴマークのデザインを変更で…」という失敗への対策をお伝えします。

このようなコスパが悪い商標登録になってしまわないための対策としては、一般論として「ロゴよりも標準文字で商標登録するのが優先のことが多い」ことを覚えておきましょう。

ロゴマークは将来変わる可能性がありますが、文字列自体が変わることはまずないためです。

また、標準文字で商標登録すれば、ロゴマークにもある程度の権利が及びますので、その意味でも、まず標準文字で商標登録するのがセオリーです。

この、セオリーを押さえた上で、場合によっては、ロゴマークを優先する場合もあります。

標準文字を優先する方がメリットが大きいか、ロゴを優先する方がメリットが大きいかの判断は、かなり難しいですので、弁理士に相談することをお勧めします。

7.ロゴで商標登録して後悔する

商標の選択の失敗のよくあるパターンとして、もう一つ挙げます。

何も考えずにロゴマークで商標登録してしまい、後悔するパターンです。

まずは、失敗の内容について解説します。

ロゴで商標登録して後悔する|失敗の内容

このパターンでは、やや一般的な言葉っぽい言葉を商標登録してしまったケースが多く見られます。

例えば、「いきなりステーキ」という言葉は、パッと見だと、「サービス内容をそのまま表した言葉か?」とも思えますよね。

※詳しくはこちらをご参照ください。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2013-081253/40/ja

「いきなりステーキ」は、エスフーズ株式会社が、しっかり標準文字で登録している商標です。

これがもし、エスフーズ株式会社が、何も考えずに、少しデザインした文字の、ロゴ商標で商標登録してしまったとすると、後々、非常に面倒なことになっていたかもしれません。

こんな感じです。

このように商標登録した後に、もし他人が「いきなりステーキ」という名前のお店を開いた場合、当然、「商標権侵害です。やめてください」と言うわけですが、「いや、あなたのところは、デザイン込みで商標登録になっているだけでしょう。

「『いきなりステーキ』という言葉は、サービスの内容を表しただけの一般的な言葉ですよ」と反論される可能性があります。

その結果として、「いきなりステーキ」は、特定のブランドを指す言葉ではなく、最初からステーキを出すビジネスモデルの名前として一般的に使われる言葉になってしまう可能性があります。

私たちの周りには、元々は商品名や登録商標だったけれど、不特定多数で使われてその商品をさす一般的な名称になっているものがたくさんあります。

例えば以下のようなものがあります。

このような現象を「普通名称化」といいます。

この失敗に対する対策は、次の「8.「二段併記」で商標登録して後悔する」の対策と通じるものですので、後ほど解説します。

8.「二段併記」で商標登録して後悔する

次にあげる失敗例は、「何も考えないで二段併記で商標登録してしまい後悔する」です。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

「二段併記」で商標登録して後悔する|失敗の内容

文字列とロゴを組み合わせた登録商標はよくありますが、ここではロゴマークではなくて、何も考えないで二段併記で商標登録してしまい後悔するパターンを解説します。

二段併記とは、このようなものをいいます。

これは、日本の商標登録の業界で古来から用いられていた伝統的な技法です。

私も、たまに使うことがあります。

「日本語とアルファベット両方を一つの商標にしてコスパよく登録しよう」という、ちょっと裏技のようなやり方です。

もし、この方法で商標登録してしまった場合、果たして「いきなりステーキ」という普通の文字列だと商標登録が認められるのか、ということが判然としません。

そうすると、先ほどの、何も考えずにロゴマークで商標登録してしまった場合と同じように、普通名称化してしまう可能性があります。

つまり、普通の一列の表記で「いきなりステーキ」と使用している人がいたときに、「商標権侵害だからやめてくれ」といっても、「いや、これは、一般的な言葉です。あなたの商標は、二段併記だから登録になっているだけでしょう」と、反論される可能性があるということです。

「二段併記」で商標登録して後悔する|対策

ここで、「「二段併記」で商標登録して後悔する」という失敗への対策をお伝えします。

なお、この対策は「7.ロゴで商標登録して後悔する」にも有効です。

このような失敗が起きないようにするための対策は、やはり、「商標登録は、原則、標準文字が優先」と言うことを覚えておくことです。

もう少し抽象的にいうと、ロゴマークや、二段併記以外でも、「なるべく余計な要素を省いた、シンプルな形で商標登録するのが優先」ともいえます。

例えば、「いきなりステーキ」の一号店は銀座だそうですが、「いきなりステーキ銀座」みたいな形で商標登録するよりは、シンプルに「いきなりステーキ」で商標登録するのがベストです。

あくまで「もしも」の架空のお話です。

いきなりステーキは、きちんと標準文字で商標登録されています。

登録5663544 エスフーズ株式会社

9.国際出願できない!

よくある失敗の9つ目は、国際出願しようと思ったら、国内の商標登録に問題があって、国際出願ができないパターンです。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

国際出願できない!|失敗の内容

先に国際出願とは何かごくごく簡単に説明すると、外国で商標登録する場合に、外国の特許庁に直接、1カ国ずつ商標申請するのではなく、国際事務局というところを通じて、複数カ国に一度に商標申請する制度です。

国際出願は、複数の外国で商標登録する場合は割安になり、手続きも簡単になるのでとても便利な制度です。

ただし、国際出願を使うための条件として、日本の商標登録をベースにする必要があります。

つまり、外国に展開したい商標と、完全に同じ商標を、日本で商標登録している必要があるということです。

ここでのポイントは、「完全に同じ商標を」という部分です。

例えばよくある失敗としては、日本でカタカナで商標登録していた場合があります。
例えばこんな感じです。

このカタカナの商標登録は、日本においては、アルファベットの商標登録とほぼ変わらない効果を発揮します。

なので、日本において、カタカナのスターバックスと、アルファベットのSTARBACKS、両方を商標登録するメリットは比較的少ないです。

しかし、カタカナの「スターバックス」を外国で商標登録しても仕方がないので、これは、国際出願のベースとしては使えません。

同じ理屈として、カタカナとアルファベットを二段書きにして商標登録しているようなパターンも、国際出願のベースとしては使ないので、これも注意が必要です。

こういった場合、国際出願をする前に改めて日本でアルファベットのSTARBAKSを商標登録したのちに、国際出願へと進む流れになるため、日本で商標登録する費用もかかりますし、国際出願のスケジュールも遅れてしまいます。

これ以外にも、国内出願にちょっとした問題があることで、外国での商標登録が思うように進まなくなるケースは多々あります。

例えば、「指定商品に穴があった」でお話ししたような場合も、これをベースにして国際出願しようとした場合には、問題が生じます。

国際出願できない!|対策

このような失敗をしないための対策は、できれば国内の商標登録の段階から、外国での商標登録に強い弁理士に頼むことです。

その上で、国内の商標登録をするときに、弁理士に、「将来は外国での商標登録も見据えている」ことを伝えましょう。

そうすると、外国商標の経験値の高い弁理士であれば、国際出願のベースにしやすい形で商標登録してくれると思います。

10.不使用で商標登録が取り消される

よくある失敗の10個目は、不使用取消審判で商標登録が取り消されるパターンです。

まずは、失敗の内容について解説し、次に対策を解説します。

不使用で商標登録が取り消される|失敗の内容

そもそも、不使用取消審判という制度自体、一般の方は、ほとんどご存知ないかと思いますので、簡単に説明します。

不使用取消審判という制度は、商標登録したはいいけれど、その後3年以上その商標を使っていない状態でいた場合、その商標登録を取り消すことができるという制度です。

これは、自動的に取り消されるわけではなくて、ほとんどの場合は、その商標を使いたいという他人が、「不使用取消審判請求」という請求をすることにより、取り消されます。

これはどのようなときに起きるかというと、最も多いのは、指定商品役務を広く指定していた場合です。

例えば、教育に関する事業をされている方が、41類の「知識の教授」に加えて、将来、アプリを作るかもしれないからと、第9類のアプリケーションソフトウェアも指定したけれども、登録から3年以内には、アプリを作る目処は立たなかった場合です。

次に多いのは、実際に使うのとは異なる商標で登録してしまった場合です。

例えば、実際には「アイリンク国際特許商標事務所」として使うにも関わらず、「アイリンク」だけで商標登録したような場合ですね。

あとは、ロゴマークで商標登録したけれど、ロゴマークのデザインが後に変更になった場合などがあります。

不使用で商標登録が取り消される|対策

このような失敗が起きないようにする対策は、商標登録したのと完全に同一な商標を、ちょっとでも良いから使うようにするということです。

現実的におすすめな方法としては、どこか一箇所ウェブサイト上のあまり目立たない位置に掲載しておくことかなと思います。

そうすれば、商品のパッケージなどがリニューアルされて変更されたのちも、登録商標を使い続けることができます。

この記事を動画で見たい方はYoutubeでも解説しています!

まとめ

今回は、「商標登録のよくある失敗10選と対策」についてお話ししてきました。

ここで、再度、商標登録のよくある失敗をまとめます。

商標登録のよくある失敗10選
  1. 拒絶理由通知が届いて諦めてしまう
  2. 商標登録になると思っていたのに…
  3. 類似商標があった
  4. 指定商品に穴があった
  5. 商標に余計な要素を含める
  6. ロゴマークのデザインを変更で…
  7. ロゴで商標登録して後悔する
  8. 「二段併記」で商標登録して後悔する
  9. 国際出願できない!
  10. 不使用で商標登録が取り消される

今回解説した10個の失敗を解説している弁理士の記事はほとんどないと思います。

なぜかというと、多くの弁理士は、このような失敗は弁理士の失敗というより、クライアントの方の選択ミスだと思っているためです。

だからこそ、この記事を読まれたみなさんは、自分で商標登録する場合はもちろん、弁理士に依頼する場合であっても、これらのよくある失敗をよく覚えておきましょう。

ぜひ、記事をブックマークするなどして読み返してください。

今日の記事はここまでになります。

今回の話があなたの会社で商標登録を検討するときに役立つことを願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

アイリンク国際特許商標事務所のホームページでは、特許、商標、著作権などの知的財産権について、ビジネス上必要な知識だけを厳選して掲載しています。

ぜひ、他の記事もご覧ください。

また、もっと具体的に相談したい方は、お問い合わせフォームから、私のオンライン個別相談をお申し込みください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次