1000人の経営者から聞いた|商標登録する33個の理由と目的・メリットも解説!

こんにちは、アイリンク国際特許事務所の弁理士の井上です。

ビジネスをしていると、いろいろな場所やビジネスシーンで商標登録をするメリットを聞く機会があると思います。

しかし、この記事を読んでいる多くの方は、法律上のメリット云々よりも、実際のビジネスにどの様なメリットがあるのかを知りたいのではないでしょうか?

言い換えれば、商標登録をしている企業や個人が、「実際にどの様なメリットを感じているのか?」「どの様な目的や理由で商標登録しているのか?」といった点を知りたいのが実情でしょう。

そこで、今回は、私がこれまで弁理士として商標登録のご相談を受けた1000人以上の方の「どの様な目的あるいは理由で商標登録し様と考えたのか」を全てピックアップしました。

私の経験に基づいたものを全てピックアップした上で、AIを利用して漏れがないかもチェックしましたので、本当にありとあらゆる視点から「商標登録する目的や理由」をご紹介できると思います。

「商標登録する理由や目的」がわかれば、おのずとメリットも見えてくるものです。

この記事を読めば、理屈ではなく、現実のビジネスシーンで多くの経営者様たちが「なぜ商標登録をし」、「商標登録によりどの様なメリットを得ているのか」が、よりリアルにわかります。

また、現在、商標登録について悩んでおられるみなさんの「商標登録をする必要があるのか」、「どの程度お金をかけるのが適切なのか」などの悩みを解決する答えが見つかるでしょう。

ぜひ、最後までお読みください。

目次

商標登録をする目的と理由|王道の目的と理由5選

商標登録する目的や理由は、企業ごとに異なりますが、以下の5つが目的や理由であるケースが大半です。

  • 自分が使えなくなることだけは防止するため
  • 他人に同じ商標を使わせないため
  • 真似されたくないため
  • 意図せずに自分が商標権侵害しない様にするため
  • 長期的にブランドを育てるため

順番に解説します。

【その1】自分が使えなくなることだけは防止するため

商標登録をするお客様が最も口にされる理由は「自分が使えなくなることだけは防止するため」です。

商標登録は、原則早い者勝ちの制度です。

そのため、自分が商標登録しない限りは、先に他人に商標登録される可能性があります。

すると、自分が使いたい商標であるにも関わらず他人のものとなり、自分自身がその商標を使えなくなるのです。

例えば、10年間使っていた店名や商品名であっても、これと似たような商標を他人に商標登録されてしまうと、自分が先に使っていたにも関わらず、いきなり使えなくなることもあり得ます。

ビジネスをする上で、この状況だけは避けたいというご相談のお客様は非常に多くいらっしゃいます。

【その2】他人に同じ商標を使わせないため

次は「同じ様な商標を他人に使われたくない」という理由です。

これも当然のことです。

もし、同じ業種に同じ様な商標を使っている人がいたら、購入するお客様から見て紛らわしく混乱を招きます。

他社製品を自社製品と間違えて購入されてしまうと、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまいます。

【その3】真似されたくないため

「真似されたくない」という理由もあります。

これは、その2の「他人に同じ商標を使われたくない」とほぼ同じともいえますが、私の経験上、ご相談にみえるお客様の中ではかなり違うニュアンスで使われています。

このケースのお客様は、偶然同じ商標を使う人がいるという状況ではなく、「意図的に真似をする人が商標登録するのを防止したい」という考えをお持ちです。

過去に、実際に模倣品の被害にあった経験がある経営者様は、この「真似されたくない」という表現を使います。

また、自分が使っているネーミングやキャラクターデザインなどに自信を持っており、真似される可能性が高いと考えている経営者様もこの言葉を口にされます。

【その4】意図せずに自分が商標権侵害しない様にするため

「意図せずに自分が商標権侵害しない様にするため」は、重要な目的ではあるのですが、初めからこの目的を口にされるお客様は非常に少ない印象です。

もっとも、初めは気がついていなくても、面談している中で「自分が加害者になる可能性がある」と気づく方もそれなりにいらっしゃいます。

私の感覚ですが、気づくのは、女性の経営者様が多いかもしれません。

【その5】長期的にブランドを育てるため

次は、「長期的にブランドを育てるため」です。

本来、これが商標登録の最も王道の目的だと思います。

経営者様はもちろん「長期的にブランドを育てる」ことを考えておられると思いますが、この目的を口にされるお客様は、あまり多くありません。

もっとも、これは熟練の経営者様にとっては当たり前なことなので、あえて口にしないだけかもしれません。

商標登録をする目的と理由|迷惑をかけないための目的3選

次に、さらに親しみやすい「商標登録をする目的と理由」を挙げます。

ビジネスをする上で、取引先や自社の社員に迷惑をかけたくないと考える経営者様も多くいらっしゃいます。

そういう経営者様が挙げられる「商標登録をする目的と理由」は「迷惑をかけないための目的」です。
以下の様なものがあります。

  • お客様に迷惑をかけないため
  • 他店と間違われないようにするため
  • 後継者に迷惑をかけないため

順番に解説します。

【その6】お客様に迷惑をかけないため

この章の最初は、「お客様に迷惑をかけないため」です。

これは、実は、非常に重要な視点だと思います。

例えば、みなさんが、世界中で圧倒的No.1の品質の商品を販売していれば、ブランド名が変わっても問題ないかもしれません。

しかし、実際には、その様な企業はほとんどありません。

シャネルやエルメスといったハイブランドの商品であっても、商品の品質だけで考えれば同じ様に高品質な商品は他にもあります。

つまり、ブランドの商品を購入する人は、もちろん商品を気に入っていますが、ブランドも大切だと考えている「いわばブランドのファン」なのです。

もし、商標権のトラブルにより急にブランド名が変わってしまえば、ブランドのファンであるお客様はがっかりして購入を控えることは容易に想像できます。

お客様の信用を得て、長く愛用してもらうためにも、ブランド名(商標)をきちんと登録し、「お客様に迷惑をかけない様にする」ことは重要です。

【その7】他店と間違われないようにするため

街中には同じ様な名前の飲食店が多くあります。

みなさんも、お店を予約しようとして、間違えて似た名前のお店に電話してしまったことはありませんか?

こういう間違いもお店側にとってはビジネスチャンスを逃す一因です。

お客様は「あのお店に行きたかったのに別の店を予約してしまった」と当然思います。

お店としては「せっかく選んでくれたお客様に迷惑をかけてしまった」と考えるでしょう。

実は、このシチュエーションに困って飲食店が商標登録をご依頼されるケースは多くあります。

【その8】後継者に迷惑をかけないため

この章の最後は「後継者に迷惑をかけないため」です。

自社の社名や商品名の権利をきっちり確保した上で、息子や娘に安心してビジネスを引き継いでほしいというお考えでのご依頼も多くあります。

商標登録をする目的と理由|対外的な要請によるもの3選

ビジネスをしていれば、「上場を目指そう」「取引先や親企業の信頼に応えたい」といった機会や、「取引先に商標登録を求められた」といった機会があるでしょう。

その様な機会に商標登録をする企業も多くあります。

例えば以下の様な理由で商標登録するケースが多くあります。

  • 上場を目指すため
  • 取引先からの要請に応えるため
  • 親企業からの要請に応えるため

順番に解説します。

【その9】上場を目指すため

「上場を目指そう」というタイミングで、商標登録をきっちりしておこうというお客様は多数おられます。

商品名の商標登録はもちろん、商品名は商標登録していたものの企業名は登録していなかったお客様が、このタイミングで企業名も商標登録するパターンも多く見られます。

【その10】取引先からの要請に応えるため

「取引先に要請されて」商標登録するお客様も多数おられます。

取引先が「商標登録を要請する」場合は、取引先がライセンスを受けるなど法律的な観点に基づく理由が多く見られます。

その一方で、「商標登録くらいちゃんとしておいて」というアドバイス的なものの場合もある様です。

【その11】親企業からの要請に応えるため

「親企業からの要請に応えるため」というケースは、少ないながらもあります。
経験上、数社はあったと思います。

商標登録をする目的と理由|業務提携などのため4選

次に、「対外的な要請」という受け身的な理由ではなく、積極的な「業務提携などのため」の商標登録をする目的と理由をご紹介します。

ここでは、以下の4つをご紹介します。

  • 業務提携先にライセンスするため
  • 業務提携先の信頼を得るため
  • 小売店からの信頼を保つため
  • 企業や事業を売却するため

順番に解説します。

【その12】業務提携先にライセンスするため

業務提携をするとなると、提携先に、自社の商標を使ってもらうシチュエーションが出てきます。

例えば、
渋谷で人気のABCカレーというカレー屋さんがあるとします。

大手メーカーのハウス食品と業務提携し、このカレー店が監修したレトルトカレーを「ABCカレー監修」という名称で販売するとします。

この様な場合には、「ABCカレー」という名称をハウス食品に使って貰わなければなりません。

このとき、もし、ABCカレーを商標登録しておらず、他社が「ABCカレー」を商標登録してしまったら、どうなるでしょう?

商標を登録した他社は、「ABCカレー」というカレー店に商標使用の停止を要求できるだけではなく、その商標を業務提携で使っているハウス食品にも商標の使用の停止を求められるのです。

業務提携先であるハウス食品は大変な大迷惑を被ります。

したがって、業務提携する場合は、自社の商品名や社名などを商標登録することが重要です。

ましてや、相手が大手企業ならば、必須のこととなります。

【その13】業務提携先の信頼を得るため

上の例の様な「ABCカレー」といった自社の商標を使ってもらうことがなくても、法律的な面もきちんとしている企業と業務提携する際に、商標登録する企業もあります。

商標登録することで、法律的な信頼も得られるためです。

【その14】小売店からの信頼を保つため

次は、「小売店からの信頼を保つため」です。

これは、これまで説明したいわゆる「業務提携」とは少し異なりますが、このセクションに含めました。

自社の商品を、デパートなどの大手小売店に販売してもらうタイミングで、商標登録をする方も結構います。

これは、これにより、自社商標の地位名度が一気に上がるため、防御のためということもありますが、もう一つの目的は、せっかくご縁をいただいた、デパートとの信頼関係を保つためです。

私の知る限り、デパートや、今では大手のECサイトなどで、自社商品を販売させてもらうときに、「ちゃんと商標登録していること」をデパート側から要求されることっていうのは、聞いたことがありません。

私が知らないだけで、あるのかもしれませんが。

しかし、それに甘えて、デパートで商品を販売してもらっていて、万一、商標権侵害で警告を受けたりしたら、これは最悪の事態です。

このデパートとしては、侵害品を販売させられたわけですから、このような会社とは2度と付き合いたくないと言われる可能性があります。

【その15】企業や事業を売却するため

将来的に企業や事業を売却することを見越して、に商標登録する方も多くいます。

これは、売却する企業や事業の価値をはかりやすくするためです。

商標や特許などの知的財産は、目に見えないものですので、権利化されていなければ、価値を測りづらいと考えられます。

さらにいうと、買取先の立場から見ると、登録されていない商標は、本当にそれを適法に使えるかすら、確信が持てません。

そのため、「企業や事業を売却する」際には、必要な商標や特許をきちんと整理し保護されている状態にしておくことが望ましいです。

商標登録をする目的と理由|著名商標の先取り(※番外編)

ここで、少し毛色の異なる番外編を挟みたいと思います。

それは、「著名商標の先取り」です。

商標登録の目的としては、正直なところ個人的には良いことだとは思いません。

しかし、実際には、それなりの数のご相談があります。

私に相談されるお客様は真面目な方が多く、あからさまにひどい競合他社のパクリ商標などの相談はありません。

しかし、外国では有名なものの日本では商標登録されていない商標の先取りの相談などは、それなりに件数があります。

こういう場合は、完全にお断りするわけではなく、「登録にならないか、なったとしても取り消される可能性があります」とお伝えしています。

すると、少なくとも私への依頼は取りやめるケースがほとんどです。

商標登録をする目的と理由|マルアールマーク関連3選

みなさんも商品や企業名の右上に付いている丸に囲まれた小さな「R」マークを目にしたことがあると思います。
あのマークは、「マークが付いているロゴや文字が登録商標である」ことを示すマークで「マルアールマーク」と呼ばれています。
「R」は、「Registered Trademark」(登録された商標)の「R」です。
このマルアールマークに関連した商標登録する目的と理由は以下の3つです。

  • マルアールマークは信頼感がある
  • マルアールマークをつけるとかっこいい
  • マルアールマークをつけると他人が自主的に商標の使用をやめてくれる

順番に解説します。

【その16】マルアールマークは信頼感がある

この章の最初は、「マルアールマークは信頼感がある」です。
「マルアールマークをつけると、きちんとビジネスをやっている様に見られそう」という感想を持たれる方も多くいらっしゃいます。
そこで、印象を大切にしたいという理由で商標登録を希望される個人事業主の方などが多い印象です。
商標登録という制度が一般の方にも浸透して理解されてきた昨今では、マルアールマークの認知度も上がっています。
商品名やサービス名のロゴや文字にマルアールマークが付いていることで、「きちんと商標登録しているビジネスなんだな」とお客様の信頼を得る効果はある様です。
私達弁理士から見ても、「きちんと商標登録をする経営者様は人間的に真面目で信頼できる方が多い」と思います。

【その17】マルアールマークをつけるとかっこいい

先ほどの目的とは異なり、ライトな感覚で「マルアールマークをつけるとかっこいい」という理由で商標登録をされる方も、一定数いらっしゃいます。

これは、一見軽い理由に思えますが、私は重要だと考えています。

それは、ロゴにマルアールマークを付けることで、ロゴマークのデザインの美しさをアピールするだけでなく、ブランドイメージを上げることができるためです。

私の事務所では、マルアールマーク付きのロゴを最初から想定し、提携しているデザイナーにマルアールマーク付きのロゴの作成を依頼することもあります。

マルアールマークをつけることを最初から想定してデザインしておけば、商標登録された場合にすぐに対応できます。

商標登録をお考えの際には、ぜひデザインもご検討ください。

【その18】マルアールマークをつけると他人が自主的に商標の使用をやめてくれる

この章の最後は「マルアールマークをつけると他人が自主的に商標の使用をやめてくれる」です。

マルアールマークの最大のメリットは、商標登録していることを世の中に伝えられることです。

世の中に「商標登録しています」とアピールすることで、こちらからアクションしなくても、同じ様な名前を使うことを自主的にやめる人もいます。

昨今では、数の多い中小企業にも商標登録の制度が知られてきました。

しかし、マルアールマークが付いていないものに対して「もしかしたら商標登録されているかもしれない」と想像が及ぶ人は、まだまだ少ないのが現状です。

一方、マルアールマークの認知度が上がったことで、このマークが付いていれば「商標登録しているんだな」とわかります。

その結果、マルアールマークをつけると、使用を避けてくれる方が結構多いというのが私の実感です。

商標登録をする目的と理由|キャラクターデザイン関連2選

キャラクターなどのデザインを保護するために、商標登録をしたいという方も多数います。

このケースは大きく2パターンあります。

1つ目は、キャラクターデザイン自体は著作権で保護されていることを知らないで、商標登録したいというパターンです。

2つ目は、キャラクターデザインは著作権で守られていることをよく理解した上で、商標登録により、さらに権利を盤石にしたいというパターンです。

順番に解説します。

【その19】著作権があるキャラクターデザインを商標登録したい

ここでは、まず、キャラクターのデザインは著作権で保護されているということを説明します。

一般の人にとっては、商標権よりも著作権の方が身近でよく知られている権利でしょう。

「キャラクターデザインは著作権で守られているのだから、法律上、誰かにコピーされたりパクられたりできない」と考える方が大半だと思います。

そして、「著作権で守られているから商標権は必要ないはず」というのがスタンダードな考え方です。

しかし、実際にはキャラクターデザインを商標登録したいという方は、かなりたくさんいます。

その一つの理由は、「キャラクターデザインが著作権で守られている」ことを知らず、商標登録したいと考えるパターンです。

この場合は、キャラクターデザインは著作権で守られているので、簡単に真似されることはないことは説明した上で、それでも、商標登録をすることでさらに守りを盤石にできることを説明します(商標登録するメリットはその20でご説明します)。

【その20】著作権の弱点をカバーするのに商標登録したい

キャラクターデザインは著作権で守られていることをよく理解した上で、商標登録によって、さらに権利を盤石にしたいという方もいらっしゃいます。

実は、商標権は、著作権とにはない強い要素があります。

それは、「真似をしたか独自に作ったか」は関係なく、類の商標を使っていたら問答無用でやめさせられることです。

例えばみなさんが著作権を持つキャラクターを使って文具を販売していたとしましょう。

他の人がそのキャラクターと似たような紛らわしいキャラクターを使って文具を販売した場合、問答無用で販売をやめさせられます。

ただし、商標権には弱い点もあります。

商標登録は、商品やサービスなど、業種ごとに登録しなくてはなりません。

つまり、あらゆるものに対して権利を及ぼすことは難しいのです。

先ほどの例で言えば、他の人がみなさんが登録していない分野、例えば衣類に使用された場合は販売をやめさせることはできません。

こういう事情から、ピカチュウやくまモンなど有名なキャラクターで、かつ商業上の価値が高いキャラクターデザインは、商標登録されています。

商標登録をする目的と理由|インターネット上の競合排除5選

続いて、インターネット上でビジネスをしている方に多い「インターネット上の競合排除」に関する商標登録をする目的と理由を解説します。

この目的と理由は、主に以下の5つです。

  • Amazonでブランド登録するため
  • 相乗り出品者を制限するため
  • SEOのため
  • Google広告などのため
  • 普通名称化を防止するため

順番に解説します。

【その21】Amazonでブランド登録するため

世の中には様々なECサイトがあります。

その中で、近年で一番多いのは、Amazonでのブランド登録だと思います。

これは、日本でも多く見られますし、アメリカのアマゾンでブランド登録するためにアメリカで商標登録する方も多くいらっしゃいます。

【その22】相乗り出品者を制限するため

先ほどのAmazonでブランド登録する目的としては、Amazonでの販売のほか、「Amazonにおける相乗り出品者の抑制や模倣品の販売を制限したい」という目的も非常に多いです。

【その23】SEOのため

インターネット関連の商標登録の目的としては、Amazonでのブランド登録を除くと「SEOのため」が多く見られます。

10年以上前から継続してこの目的で多くの商標登録がされています。

これは商標登録すると、Google検索で上位に表示されるためです。

自社の企業名や、商品名、店名でGoogle検索をしたときに、競合他社のウェブサイトが上位に表示されることを苦々しく思う経営者様は多い様です。

自社を上位にして集客などをアップしたいと商標登録するケースも多く見られます。

もっとも、最近はこのケースは少し減ったかもしれません。

これには、インターネットユーザーの検索スキルが上がったことや、企業側もホームページだけでなくSNSなどのアカウントを持つ様になったことが関係していると思います。

インターネット上で競合他社と紛らわしく混在している状態が起こりにくくなっており、SEOのために商標登録する必要性が減ってきているのではないでしょうか。

【その24】Google広告などのため

「Google広告などのため」の商標登録は、最近少し減りましたが以前はかなりありました。

Google広告に出稿する際に、他社の商品名などをキーワードとして入札するというテクニックがあります。

つまり、自社の商品名を検索したときに、他の企業の広告が出てきてしまうのです。

これを防止するには、商標登録が有効な場合があり、そのために商標登録するケースもあります。

【その25】普通名称化を防止するため

インターネット関連の章の最後は、「普通名称化を防止するため」です。

最初は誰かが言いだした言葉であっても多くの人が使う様になり、普通名称化することはよくあります。

その状態になると、言いだした本人も含め誰も商標登録できなくなることがあります。

そのため、普通名称化を防止するべく商標登録するケースがあるのです。

この普通名称化の例としては、「ゆっくり茶番劇」などがあります。

最初は誰かが考えた造語であっても、インターネット上で不特定多数の人が使う様になると、誰も商標登録できない一般的な言葉になってしまいます。

新しい占いの手法の名前などもすぐに普通名称化する傾向が強いです。

ある占い師が命名した名称でも、「これいいな」と思った人がネット上でどんどん使ってしまい、すぐに普通名称化してしまいます。

食品にもこのケースが多く見られます。

お餅とワッフルを合わせた造語の「モッフル」がその例です。

元々は三栄コーポレーションの登録商標でした。

しかし、商標登録の更新をしなかった後に、あっという間に普通名称になった印象があります。

商標登録をする目的と理由|海外進出関係3選

次は、外国への進出を見据えている企業の商標登録の目的と理由について解説します。

外国での商標登録を見据えて、「まずは日本で商標登録」と考える企業は多くあります。

日本での商標登録の目的は以下の3つです。

  • 国際登録出願(マドプロ)のベースにする
  • アメリカでの商標登録を簡略化する
  • 中国での先取りや模倣品対策をする
  • 日本国内で製造するため

順番に解説します。

【その26】国際登録出願(マドプロ)のベースにする

最もスタンダードな目的は「国際商標を取得するベースとする」ことです。

「日本の商標登録」をベースにして、国際登録出願(マドプロ)をします。

【その27】アメリカでの商標登録を簡略化する

アメリカの商標制度では「実際に使用しているかどうか」を厳しく審査されます。

そのため、「商標を使用している」ことを証明する「使用証拠」の提出が必要です。

「日本での商標登録」が「実際に使用している証拠」の代わりになることもあり、アメリカでの商標登録が楽になることがあります。

そのため、かなり細かいテクニックではあるものの「アメリカの前に日本で商標登録する」という方も多いです。

【その28】中国での先取りや模倣品対策をする

ここ10年ずっとご依頼が多いのは、「中国での先取りや模倣品対策」のための商標登録です。

先ほど「番外編」でお話しした様に、中国人に限らず、日本人にも著名商標を先取りしようとする人はいます。

しかし、中国は、日本とくらべてもかなり商標を先取りする事件が多いように思います。

日本国内で少し有名になり始めたくらいの商標が中国で先取りされることはよくあるケースです。

また、先取りとは全く違う話なのですが、そもそも、近年の中国では、日本の数十倍の数の商標登録がされています。

すなわち、アルファベット商標などは、たまたま同じ商標が登録されている可能性は日本の数十倍あるということになります。

そのため、先取りや模倣をされる前に、あるいは同じ商標がたまたま商標登録されてしまう前に、確実に自社の商標を中国で登録をしようと考える方が増えているのです。

【その29】日本国内で製造するため

国をまたいで製造および販売する際に見落としがちなのは、販売する国および製造する国の両方で商標登録が必要であることです。

例えば、商品の製造と商標のラベルを貼る作業は日本でおこない、アメリカで販売する場合、アメリカだけでなく日本での商標登録も必要になります。

この場合、アメリカでの商標登録に注力して日本での商標登録をしていないケースもあります。

もし、日本で同じ商標を誰かに登録されてしまうと、理論的には日本国内で商標のラベルを貼った瞬間に商標を侵害してしまいます。

より、現実的にはアメリカに輸出しようとした瞬間、商標権侵害で輸出を止められる場合があります。

すなわち、アメリカに商品が届かなくなることとなり、ビジネスが全くできなくなるということです。

そのため、販売する国だけでなく製造する国での商標登録が重要です。

同じ理由で、商品の販売地は日本だけれど、商品を製造してラベルを張るのは中国、という場合には、本当は中国でも商標登録することが理想です。

商標登録をする目的と理由|商標権侵害で警告するため

続いて、商標侵害で警告する目的で商標登録する場合を解説します。

この場合以下の2つのパターンに分かれます。

  • 真似をやめさせるために商標登録する
  • 権利を万全にするために商標登録を見直す

順番に解説します。

【その30】真似をやめさせるために商標登録する

あらかじめ商標登録してあれば他社の真似を防止できますが、自社製品やサービスの商標を登録していないと、他社が真似をしていても警告すらできません。

そこで、真似されるのを防止するためではなく、実際に真似されてから、それをやめさせるために商標登録をするというパターンも多くあります。

ある程度ビジネスの規模が大きく、商品の種類が多くなると、全ての商標をあらかじめ登録するのはコスト的に難しいという場合もあります。

そこで、実際に「使用をやめさせる段階」になってから、商標登録をすることは珍しくありません。

この様な場合は、なるべく早く商標権を手に入れたいので、早期審査という制度を利用します。

【その31】権利を万全にするために商標登録を見直す

あらかじめ商標権は取得していたけれど、指定商品の範囲などが完璧でない場合もあります。

この状態では、指定商品以外の分野で商標を真似されても、警告することはできません。

そこで、真似されている分野も含む形に修正し、相手方に警告書を送るケースもあります。

例えば、ABCというブランド名でお茶とお酒を販売している企業が、お茶だけ商標登録していたとしましょう。

お酒については商標登録していない状態です。

このまま他社に警告書を送るのは得策ではありません。

なぜならば、警告書を受けとった他社が、慌ててお酒について商標申請してしまうかもしれないためです。

そうすると、今度は、ABCというブランドを元々持っていた会社が、真似をした他社の商標権を侵害する立場になってしまいます。

私は、こういう現象を「カウンターパンチ」と呼んでいます。

この様な場合は、お酒についても商標申請して権利を万全にした後に、他社に警告書を送るのが理想です。

商標登録をする目的と理由|商標権侵害で訴えられたため

次は、こちらが商標権侵害で警告を受けて商標登録する場合を解説します。

この場合は以下の2つのパターンがあります。

  • 類似していないことを証明するため
  • 再度同じ様な目に遭わない様にするため

順番に解説します。

【その32】類似していないことを証明するため

警告を受けた場合、明らかに商標権侵害しているならば使用を停止しなければなりません。

しかし、警告を受けたものの「いや、これ、私が使っている商標とあまり似ていないよね?」と思う場合もあるでしょう。

その場合は、まず、今使っている商標を特許庁に商標申請します。

もし、商標登録になれば、警告してきた商標とは類似していない異なるものであると証明され、その商標を安心して使えます。

【その33】再度同じ様な目に遭わない様にするため

警告書を受けて商標を変更した経験を持つ会社が、「ニ度と同じ目に遭わない様に」と自社の商標を商標登録するというケースも多くあります。

改めて見ると、商標権侵害のご相談の場合、侵害された側からのご相談であっても侵害してしまった方からのご相談であっても、併せて何らかの商標申請のご依頼をいただくことが多い様に思います。

それだけ商標登録をしておくことはビジネスを守るためには大切なのです。

動画で復習したい方へ

ここまで、1000人の経営者様から聞いた情報をもとに商標登録する33個の理由と目的・メリットを解説してきました。

ここでおさらいしたい方には、動画解説がおすすめです。

こちらの動画で解説しているので、ぜひ御覧ください。

まとめ

今回は、文章と動画で商標登録をする理由、目的、メリットをご説明してきました。

いずれも1000人の経営者様から聞いた情報に基づいた現実のビジネスの視点に基づくものばかりです。

商標登録の理由と目的、メリットを理解したみなさんに私からアドバイスをしたいと思います。

次に大事なポイントは、「商標登録をする目的をはっきり絞り」、「費用をいくらかけるか決める」ことです。

これは、特許や商標というものは、かける費用によって権利の強さや広さが異なってくるためです。

同じ「登録」でも費用をかければ範囲が広く強い権利を取れる可能性が高くなります。

逆を考えると、際限なしに費用を投じることも可能です。

ただし、費用をかければ、希望する範囲や強さの権利を必ず得られるわけではありません。

つまり、無駄に費用をかけることもできるのが怖いところです。

そのため、「商標登録をする目的をはっきり絞り、費用をいくらかけるか決める」必要があるのです。

今回は、商標登録する「目的」を解説しましたが、実は弁理士はこの目的をあまり教えてはくれません。

商標をなんのために登録するのかは、経営にも関わる事項であり経営者様が決めることです。

そのため、弁理士は、口を挟まないというスタンスを取るのが通例です。

この記事では経営者様から聞いたリアルな「商標登録をする目的」をお教えしています。

ぜひ、みなさんやみなさんの企業に当てはめ、ロールモデルにして考えてみてください。

その上で、もう一度、自社にとって商標登録というのは、「どの程度価値があるのか」「どれくらい費用をかけるのか」をご検討ください。

もちろん、アイリンク国際特許事務所にご相談いただくのも大歓迎です。

この記事が、みなさんやみなさんの会社のお役に立てることを願っております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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