皆さんこんにちは。こんにちは、アイリンク国際特許商標事務所の弁理士の井上です。
この動画では、自分で商標検索をする方法を解説します。
私の事務所では、商標登録のご相談を受けた時、必ず初めに商標調査をします。
年に1000件程度の商標調査をしていると思います。
この時、それほど多くはないですが、「すでに自分で商標検索はしたので大丈夫です。」という方がいらっしゃいます。
ただ、非常に言い難いことなのですが、私の経験上、ご自身で、特許庁のデータベースで検索をされる時に、正しい方法で検索されている方は、ほとんどいません。
ほとんどの方は、商標登録したい「商標」をそのまま検索窓に入れて検索しているのですが、この方法ですと、多くの場合、0件と表示されるか、場合によってせいぜい数件表示される程度です。
これで安心して、類似の商標はないのでこの商標を使用しても大丈夫と思うと、非常に危険です。
この動画では、とても簡単な方法で、弁理士に相談する前に、自分でかなり正確に商標検索をすることができるようになります。
まだ、商標調査を依頼できる信頼できる弁理士がいない方や、弁理士に相談する際にも、予め自分でも商標検索ができると仕事が捗るなという方は、最後まで読んでいただければと思います。
商標検索は、類似の範囲までしなくては意味がない
本題に入る前に、商標検索における大前提のお話をします。
みなさんが、自分が商標登録したい商標がすでに誰かに商標登録されていないかを検索する場合には、その商標と完全に同一の商標だけを調べても意味がありません。
その商標と類似する商標まで調べる必要があります。
そのために重要なのは、とにかく、類似商標の「検索漏れ」がないようにするということです。
例えば、シャネルという商標を検索したときに、シャネルズとか、スーパーシャネルといったものも確実にヒットさせる必要があります。
もし、シャネルズという商標が検索でうまくヒットしなかった場合、この登録商標の存在に、気がつく方法は、私が知る限りありません。
なので、この動画では、とにかく、「類似範囲まで、確実に漏れなく検索結果に表示させる方法」をお伝えしていきます。
簡単|失敗しないJ-PlatPatの使い方
まず、簡単で失敗しないJ-PlatPatの使い方の流れを以下に示します。
- 商標を検索するときはJ-Plat Patの「称呼検索」を使う
- まずは、称呼検索(単純文字列)で検索してみる
- 商標が類似していても分野が違えばOK
- 称呼の類似検索を使ってさらに幅広く調べる
- アルファベットや漢字のとき「商標(検索用)」の検索窓も併用
- 一般的な言葉を調べるときは、Google検索を併用
商標を検索するときはJ-Plat Patの「称呼検索」を使う
商標検索は、J-plat Patという、誰でも無料で使える特許庁のデータベースを使います。
これは、我々プロも使っているものです。
まずは、GoogleでJ-PlatPatと検索してください。
すぐに、J-Plat Patという、特許庁検索サイトが見つかると思います。
これは、J-Plat Patのトップページです。
ここで、「簡易検索」の検索窓が目に止まると思います。
こちらは、特許、商標、意匠登録など全て検索できる魔法の検索窓ですが、これは通常の人間には使いこなせませんので、今回は使いません。
今回は、「商標」のタブから「商標検索」を選んでクリックしてください。
これが、我々弁理士が使っている、「商標検索」の画面です。
少し下にスクロールすると、3つの検索窓があります。
- 商標(検索用)
- 称呼(単純文字列検索)
- 称呼(類似検索)
ここで、今日の非常に大事なポイントになります。
商標を検索するときは、主に「称呼」で検索します。
つまり、この3つの中の、2つ目と3つ目です。
ほとんどの人が、1つ目の「商標(検索用)」の検索窓という検索窓を使って失敗しますので、
まず、検索に使うのは、「称呼」がメイン。これを今日は覚えてください。
まずは、称呼検索(単純文字列)で検索してみる
今、仮に、「アイリンク」というカフェを開きたい場合を想定して商標検索してみましょう。
はじめに一度、良くない例をやってみます。
商標(検索用)の窓に、いきなり、「アイリンク」と入れて、検索ボタンを押します。
すると、検索結果0件でした。
私の経験上、「自分で商標検索したけれど、同じものはありませんでした」という方の多くは、この方法で、つまり「商標」の検索窓に、商標登録したい商標をそのまま入力して検索をしていることが多いです。
この方法がなぜ悪い例かというと、この方法だと、入力した商標と、完全に一致するものしか、ほぼヒットしないためです。
そこで、繰り返しになりますが、商標を検索するときは、基本的に称呼検索を使います。
下の二つの窓ですね。
これは、商標の読み方を入力するものです。
プロが調査をする調べ時に使うのも、8割くらいは称呼検索を使っています。
称呼検索には、「称呼(単純文字列検索)」と、「称呼(類似検索)」の2種類がありますが、まずは、「単純文字列検索」をしてみましょう。
これだけでも、一番上の窓の「商標(検索用)」で検索するよりは、だいぶん広く検索することができます。
18件ヒットしました。
「アイリンク」という読み方をする商標が、18件登録されているということです。
先ほど、「商標」の検索窓で調べたときは、カタカナの「アイリンク」と完全一致するものしか検出されず結果0件でしたが、今回は、アルファベットのi.linkまで含めて幅広くヒットしていますね。
さらに見ていくと、一般的に考えられるilink(アイエルアイエヌケー)のアイリンクだけでなく、最後の文字がQのアイリンクも検出されています。
この辺りは、特許庁の審査マニュアル通りに解釈すると、カタカナのアイリンクと類似する可能性が非常に高い商標です。
先ほど、「商標」の検索窓で調べたときは、カタカナの「アイリンク」と完全一致するものしか検出されず結果0件でしたが、今回は、アルファベットのi.linkまで含めて幅広くヒットしていますね。
さらに見ていくと、一般的に考えられるilink(アイエルアイエヌケー)のアイリンクだけでなく、最後の文字がQのアイリンクも検出されています。
この辺りは、特許庁の審査マニュアル通りに解釈すると、カタカナのアイリンクと類似する可能性が非常に高い商標です。
さらに、少し下の方にスクロールすると、アイリンク国際特許商標事務所、とか、アイリンク不動産などもヒットしています。
ここで、あれ? 「アイリンク」と読む商標だけがヒットするんじゃなかったの?と思う方もいるかと思います。
特許庁のデータベースには、「アイリンク国際特許商標事務所」のような、アイリンク部分とその他の部分をある程度分離しやすい商標については、「『アインリンク』部分だけ発音する場合もあるかもね」というスタンスで、「アイリンク」部分だけの称呼も記録されている場合があります。
■部分一致検索
なお、「アイリンク不動産」のような商標も確実にヒットさせたい場合は、称呼検索を選んだ上で、「部分一致検索」を利用するのがベストです。
これは先ほどの「称呼(単純文字列検索)」の検索窓に 「?アイリンク?」のように、半角クエスションマークをつけて記入します。
そうすると、アイリンク〇〇とか、〇〇アイリンクといった商標も、確実にヒットさせることができます。
ところで、アイリンク不動産とか、アイリンク国際特許商標事務所が、カタカナ5文字のアイリンクと類似する商標と言えるか。
これは、本気で突き詰めていくと、少し判断が難しくなってきます。
しかし、覚えておいていただきたいのは、少なくとも特許庁のマニュアル通りに解釈するならば、カタカナのアイリンクと、アイリンク不動産は、類似商標である可能性はかなり高いということです。
この辺りはもう、商標検索のテクニックではなくて、商標の類似の判断の話になってきますので、今回の動画ではあまり深く触れることはしません。
商標の類似の判断については、別の動画でまた解説していく予定なので、新しい動画をお待ちください。
商標が類似していても分野が違えばOK
ここからは、「指定商品役務が同じか」を判断していきます。
つまり、今回は、アイリンクという名前のカフェを開きたいわけですので、飲食店分野以外であれば、類似の商標が登録されていたとしても問題ないわけですね。
今回18個ヒットしましたが、試しに、一つクリックして開いてみましょう。
ここで、この指定商品役務というところを見ます。
9という数字がありますね。これは第9類、といいます。
このアイリンクという商標は、第9類という分類に属する、電気磁気測定器について登録されていることになります。
すると、今回は、アイリンクというカフェを開きたいわけなので、分野が違うのでOKということになります。
ちなみに、カフェは「飲食物の提供」というサービスで、第43類に分類されています。
もう一つ開いてみましょう。
これは、うちの事務所の商標です。
第45類で、知的財産権に関する云々と記載されています。
これも、カフェには関係ありませんね。
さて、今回、18個ヒットした中で、試しに2つクリックして「指定商品役務」を確認してみました。
私は、ヒット数がこれくらい数であれば、このように、一つずつ開いて確認することをお勧めしています。
弁理士が商標調査するときは、絞り込むために類似群コードというものを使って、ここから厳密に絞り込みをかけるのですが、それは、我々はプロとしてお客さんの商標調査をしていて、登録になるかならないか、白黒をはっきりつける必要があるためです。
みなさんが自分の使いたい商標を調べるときは、まず、その商標を使うことが安全なのか、それとも何らかの障害があるのかを知ることが重要です。
ここで、下手に絞り込みをかけてしまうと、最初の「悪い例」で「ヒット数0件」となってしまったように、簡単に危険を見落とす可能性があるため、私は、一般の方には類似群コードを使った絞り込みいはあまりお勧めしません。
まずは、結論を焦らず、なるべく広く、自分の商標と類似する商標が登録されていないかを検索する方法を試してみてください。
称呼の類似検索を使ってさらに幅広く調べる
次に、称呼検索のもう一つのバージョンの「類似検索」をやってみます。
これは、いわゆる曖昧検索で、単純文字列の称呼検索よりも、さらに幅広く類似の範囲が表示されます。
また、アイリンクで、検索してみます。
今度は、313件ヒットしました。
アイリンクのように、カタカナ5文字くらいの商標の場合、称呼の類似検索を使うと、全然類似しないものも含めて、かなり多く表示されてしまう傾向にあります。
さすがにこれは広くヒットし過ぎて、役に立たないよと思うかもしれません。
しかし、意外と、300件くらいであれば、ざっと全部見ることはできます。
まずは、なんでこんなにたくさん表示されているのか、少し眺めてみましょう。
基本的には、類似度が高いものが初めの方にリストアップされます。
なので、初めのうちは、さっきの単純文字列の称呼検索と同じで、アルファベットのi.linkが並んでいます。
しかし、しばらくスクロールすると、20個目くらいからは、アイランプとか、アイロンキーとか、もう、全然似ていないものが増えてきますね。
ここから先は、ざーっと見ていく感じで大丈夫です。
しかし、辛抱強く、もう少しスクロールしてみましょう。
すると、ピンポイントで、少し類似度合いが高いものが出てきました。
例えば、59番に、「iLincs」というのがヒットしていますね。
これは、カタカナのアイリンクと類似商標と判断される可能性は十分あるものです。
次の「I RING」はどうでしょうか。
おそらく、私は、結論としてはアイリンクとは類似しないと思います。
しかし、これも、特許庁の審査マニュアル通りに解釈するならば、類似と解釈される可能性はゼロではありません。
このように、称呼検索の類似検索を使うとさすがに多く表示されすぎるのですが、これは、ざっと眺めて、気になるものだけクリックしてみるので良いと思います。
アルファベットや漢字のとき「商標(検索用)」の検索窓も併用
さて、ここまで、「称呼」での検索のみしてきましたが、商標(検索用)の検索窓にも、大事な使い方があります。
それは、漢字やアルファベットなどで、称呼、つまり読み方が複数通り考えられる場合です。
そこで今度は、カタカナのアイリンクではなくて、アルファベットの「AILink」で商標登録したい場合を想定してみましょう。
この場合、自分ではアイリンクと読むつもりでも、エーアイリンクと読むのも自然ですよね。 さらには、エーアイエルリンクと読むのも、おかしくありません。
そうすると、アイリンクで称呼検索するだけでは不安なので、商標(検索用)の窓に、エーアイエルアイエヌケーの文字列を入れます。
ここで一つ、私なりの工夫なのですが、先ほども話した通り、商標(検索用)での検索は、基本完全一致で非常にヒットしづらいため、「部分一致」の検索式を入れます。
このように、クエスチョンマークで囲むやり方です。
この検索方法を使うと、アイリンクの称呼検索ではヒットしづらい、このような商標もヒットしてきます。
ここまでやれば、取りこぼしはほとんどありません。
一般的な言葉を調べるときは、Google検索を併用
最後に、商標検索の、もう一つの非常に大きな方法を説明します。
これは、類似の商標が登録されているかの検索ではなくて、自分が登録したい商標が、一般的な言葉ではないかを調べることです。
例えば、今私が考えた造語ですが、「チョコレートインストラクター」という商標を登録したいと考えたとします。
サービス内容は、チョコレートにすごく詳しい人が、肩書として使うことを想定しています。
ここで、称呼検索をしてみると、単純文字列でも、類似検索でもヒットしませんでした。
つまり、類似の商標は登録されていません。
しかし、このチョコレートインストラクターという言葉、チョコレートという普通名称と、知識を伝える仕事であるインストラクターという普通名称をくっつけた言葉ですから、審査において、一般的な言葉だから商標登録できないと言われる可能性があります。
こういう時に、我々弁理士は、二つの方法で検索します。
一つ目は、Google検索です。
この時、ダブルクオーテーションマークでくくって、完全一致検索するのがおすすめです。
こうやって完全一致検索してみると、「チョコレートインストラクター」という言葉が、理屈はともかく、現実として、どれくらい一般的に使われているかがわかります。
もう一つは、J-PlatPatを使って調べる方法です。
色々やり方はあると思いますが、私ならば、まず、インストラクターの部分一致で調べます。
ここで、さらに正確に調べるために、検索オプションを開いて、ステータスを全てにします。
こうすると、登録商標だけでなく、審査結果NGになった商標まで見ることができます。
結果として、「チョコレートのような食品の普通名称+インストラクター」で登録になっているものは、見つかりませんでした。
一方、讃岐うどんインストラクターという商標が、一般的な言葉だとされて、登録になっていないことがわかりました。
そうすると、チョコレートインストラクターも、登録にならないかもしれないな、という推測ができます。
この記事を動画で見たい方はYoutubeでも解説しています!
こちらから視聴できます!
まとめ
それでは、今まで話した、商標検索について失敗しないためのポイントをまとめてみましょう。
- 商標ではなく、称呼の検索窓を使いましょう
- 安全のため、称呼の類似検索でも検索するとベストです。
- 絞り込みのテクニックは難しいので、無理に絞り込まず、似ているな、と思うものを開いてみるのがおすすめです
- 漢字、アルファベットなど読み方が複数考えられる場合は、称呼検索と併用で、商標の検索窓を使いましょう
- 自分の商標が一般的な言葉かもしれないと思ったときは、Google検索の完全一致検索をしてみましょう。